ポリウレタンは、1937年にドイツのオットー・バイエル博士により発明され、様々な用途に応用されながら急速に世界中に広がりました。
その後、モダニズム建築様式の代表的な建築家の一人、アルネ・ヤコブセンが1958年に世界初のモールドウレタンチェア「エッグチェア」を世に送り出します。
モダンで斬新なデザインのエッグチェアはそれまでの家具の歴史を一変させるほどの衝撃を持って迎え入れられました。デザイン、素材ともに以降の椅子製作のセオリーを変えた、まさに「歴史に刻まれる名作」です。
以降、新素材「モールドウレタン」を利用したデザイン性に富んだ椅子が数多く発表されることになります。
・複雑なデザインの製品でも再現性が高い
・設計通りのクッション性を実現できる
・様々な部材との一体成型が可能
といった特徴を活かしたモールドウレタンチェアは、ウレタンの性質をもとに大きく2種類に分類されるようになります。「軟質モールドウレタンチェア」と「硬質モールドウレタンチェア」です。
軟質モールドウレタンチェアの特徴
軟質モールドウレタンチェアは、柔らかく、被膜構造を持った軟質モールドウレタンの上質な座り心地に、鋳型による自由なデザインを施したモールドウレタンチェアです。
いわゆる人間工学に基づくデザインなど、人が座った姿勢にフィットする丸みや角度を正確に再現し、疲れにくく飽きの来ない、まさに極上の座り心地を味わえるのが最大の特徴です。
椅子用の軟質モールドウレタンは単体では柔らかすぎるため、鋳型にスチールパイプ芯材を設置してからウレタンを充填させ、接着成型することで座面・背面とフレーム/芯材の一体成型を行います。それにより椅子としての形状、耐久性を維持し、安定した座り心地を実現することができるようになります。
硬質モールドウレタンチェアの特徴
椅子の素材には、木材やポリカーボネート(いわゆるプラスチック)、スチールパイプなど様々なものがあります。しかしそれらの素材で曲線やくぼみ、ふくらみ等モダンなデザインの椅子を作ろうとすると、どうしても
・木材では曲木などの加工が行えるが、手間がかかり、均質なものを量産するのが困難
・スチールパイプでは、デザインのために多用すると非常に重くなってしまう
・ポリカーボネートは軽いが、クッション性が全く無い硬い椅子になる
など、クリアするべき課題が様々に出てきてしまいます。
硬質モールドウレタンの軽さと鋳型によるデザインの自由度、耐衝撃吸収性などの特徴を活かしてそれらの課題をクリアしたのが硬質モールドウレタンチェアです。
新潮流:超硬質モールドウレタンチェア
従来の硬質モールドウレタンチェアは、デザインの自由度は高かったとはいえ、1点だけ実現が難しいデザインがありました。
つまり「薄さ」です。背に体重を預けるとどうしても背面と座面の角部分に大きな圧力がかかってしまい、あまりに薄く製造してしまうと万が一の場合に折れてしまう等の危険があります。
これは、木製椅子においても同様のことが言えます。
配合するウレタン材の性質の研究を重ね、耐久試験・負荷テストを繰り返して行った結果、人が体重を預けても折れない耐久性を維持し、スタイリッシュな薄い椅子のデザインが完成しました。それがモールドウレタンチェアの新たな可能性、「超硬質モールドウレタンチェア」です。